虚仮


強くなりたい


そう思い始めたのは いつからだろう


拳一つで全てを乗り越えていく
そんな先人の姿に憧れ
ボクは格闘家になった


格闘を極めた後 戦士となり 更に高みを目指そうと


駆け出しの頃は 毎日が新鮮で

新しい技に新しい敵

見た事も無い大地に冒険

敵わない敵が沢山居て

沢山歯がゆい思いもした

未熟なボクを 虚仮にする人も 居た


でも

日に日に精進する自分も

戦いそのものも

全てがかけがえの無いものだった



牛のボクは草食が一番! と

背伸びしすぎて宙に浮くような花虫狩り

80歳の頃から延々と反芻し続けた


弱点もなく 新しい技術もなく

二発もらったら終わりのボクは

強撃を当てては逃げ 当てては逃げ


楽しかった


持てるだけの薬を持って

得られるハロは 一つだった


楽しかった



姿はコケにまみれていたけど 誇らしかった



それなりに強くなった と思った頃

周りが見え出した

周囲が気になるようになった

比較して 順番をつけて

自分が下がらないよう


必死になっていった




スワンプを徘徊し



花虫を求め続ける





花虫を撫でる様に倒せるようになり

より上を より効率を

より強く




ある日ふと 湖に写った自分の姿が目に入り


そこに写ったボクの顔は

何かに怯ええるような

何かに焦るような


それは あまりに弱く あまりに醜かった




人がボクを虚仮にしようと

どれだけコケにまみれようと

意にも介さなかったはずなのに


今は ボクが ボクを虚仮にしてる

その事に気付いた瞬間

ボクは歩く力を失った












なんてことは全く無く、
相変わらずのらりくらりと修行を積む毎日。

ボクは幸せ者だ。



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